2024年12月10日

「中小企業」は減少しているのか?

一般的に「日本の中小企業の数は、毎年減少している」と思われているのではないかと思います。
 
この点、総務省の【経済センサス調査】によると、日本の「中小企業」の全体の数は
 2012年(平成24年)  約385万社
 2014年(平成26年)  約380万社
 2016年(平成28年)  約357万社
 2021年(令和3年)    約336万社
となっています。
これを見ると、確かに、年々、中小企業が減少しているように見えます。
 
ただ、「中小企業」の中から個人事業者を除いた、「中小企業のうちの会社数」の数は
 2012年(平成24年)  約167万社
 2014年(平成26年)  約171万社
 2016年(平成28年)  約159万社
 2021年(令和3年)    約174万社
となっています。
これを見ると、会社形態の中小企業の数は、約10年間で、約7万社と若干増加していることが分かります。
 
さらに、国税庁の【会社標本調査】によると、資本金1億円以下の「中小法人」の数は
 2012年(平成24年)  約251万社
 2014年(平成26年)  約259万社
 2016年(平成28年)  約264万社
 2021年(令和3年)    約284万社
となっています。
こちらの調査によると、「中小法人」は、約10年間で、約33万社増加しています。
国税庁の調査結果を見ると、会社数はむしろ大幅な増加傾向にあるとさえ言ってよいように思えます。
 
また、総務省の調査の「中小企業のうちの会社数」と国税庁の調査の「中小法人」では、
約100万社の違いがあります。
 
なぜ調査ごとでこのように大きな開きがあるかについてですが、2つの調査の定義の違いに理由があります。
【経済センサス調査】では、「中小企業」について、一定の場所を占めて、従業者と設備を有し、
継続的に事業活動を行っている企業と定義しています。
簡単に言うと、昭和の時代からあるような「普通の会社」をイメージしてもらうと良いと思います。
一方、国税庁の【会社標本調査】では、シンプルに、「法人税の申告書を提出した法人」全てをカウントしています。
 
2つの調査からは、典型的な普通の会社とは異なる、多様なかたちの起業が行われていることが窺われます。
事業形態や事業内容も多様化するなかで、【経済センサス調査】の定義では、「中小企業」を狭く捉えすぎているのかもしれません。
 


2024年11月11日

​労働力不足社会の到来

今後の日本社会の最大の課題は、「労働力不足」です。
 
まず、2015年には、団塊の世代が定年退職を迎えました。
次に、2000年代から顕著になってきた少子化の進展。これにより若年労働人口が大きく減少しています。
一方で、日本人の人口が大きく減る段階には至っておらず、
社会全体での労働に対する需要(商品・サービスに対する需要)は減っていません。
これらの要因により、現在、あらゆる職種において、人手不足・労働力不足が顕在化しています。
 
ヒト・モノ・カネと一口にいいますが、今後は、「カネ・モノ」があったとしても、
「ヒト」がいないために、仕事ができないという事態が生じてきます。
しかも、今後少子化が解消される目処も立っていないため、
労働力不足については、時間が経てば自然に解決するというものではありません。
むしろ、少子化がますます進んでいることからすると、
今後、年数を重ねるごとに労働力不足は深刻になっていきます。
 
今後の企業経営においては、この「労働力不足」にどのように対応するかが極めて大きな課題となります。


2024年10月10日

​ドラッカー『顧客の創造』

今月は、ドラッカーの話をしたいと思います。

”ピーター・F・ドラッカー”、経営学の巨人です。

ドラッカーは膨大な著作を遺していますが、主著を上げるなら『マネジメント』でしょう。
 
今から5~6年前、私が森田経営に入る2~3年ほど前のことですが、
森田経営の創業者である森田勝己さんと、このような会話をしたことがありました。

森田「西川さんは、経営にご関心はありますか」

西川「興味ありますよ。ドラッカーの『マネジメント』は好きで、何度も読み返しています」

森田「そうですか!私もドラッカー好きなんですよ。
        ドラッカーのいう『顧客の創造』が経営者の永遠の課題です」


森田勝己さんは、私の妻の伯父になります。この会話をした2~3年後に森田勝己さんが亡くなられ
勝己さんの死を機に、私は森田経営に入ることにしました。
 
森田勝己さんの発言にあった『顧客の創造』、これはドラッカーの言葉の中で最も有名な言葉だと思います。
 

「企業の目的は、顧客の創造である」


『マネジメント』の冒頭に出てくる言葉で、簡潔で含蓄のある力強い言葉です。
具体的にいえば、新規顧客の獲得、獲得した顧客の定着、潜在需要の掘り起こし、新市場の開拓などを
指すものと思いますが、それだけに留まらない、より深い意味の広がりを感じさせる言葉です。
 
私が初めてドラッカーを読んだのは、今から10年ほど前になりますが
そのとき覚えた感動は今も覚えています。
ドラッカーの尽きない魅力について、今後もお伝えしていきたいと思います。

 


2024年09月10日

稲盛和夫と松下幸之助

今月は、稲盛和夫さんのお話をしたいと思います。
稲盛和夫さんのエピソードの中で、私が特に好きなものです。
 
稲盛和夫さんは、30代後半の頃、松下幸之助さんの講演を聴きに行きました。
松下幸之助さんは、70代前半頃だったと思われます。松下電器は、確固たる立場を築き上げ、松下さんも「経営の神様」との評判を確立していました。
若き日の稲盛和夫さんは、これからの経営に役立つ何かを得ようと考え、この講演に臨んだものと思います。
 
その日の講演のテーマは、「ダム経営」でした。
「ダム経営」とは、ダムが日照りのときに備えて水を溜めておくように、企業も不景気などに備えて日頃から資金に余裕を持った経営をすべきであるとの松下幸之助さんの考えです。

講演が終わると、質疑応答の時間となり、聴講者の一人が質問しました。
「『ダム経営』のお話、大変興味深かったです。ただ、具体的にどうやればいいのか分からなかったので、教えてもらえないでしょうか?」
これに対し、松下幸之助さんは、こう答えました。
「そんな方法は私も知りませんのや。しかし、まず、やろうと思わなければなりませんな」
この答えに対し、会場には失笑が広がったといいます。一件立派なことを話していても、質問されたら具体的なことは何も言えないのかと、多くの聴衆は思ったのかもしれません。

しかし、このような聴衆の反応とは違い、稲盛さんは、松下さんの返答に強い感銘を受けたのです。
「そうか。まずやろうと思うことか」
そして、稲盛さんは、ダム経営をやろうと強く心に思い、以後の経営において、ダム経営を実践するための工夫を重ね、その結果、稲盛さんは、京セラを日本有数の大企業に育て上げました。
稲盛和夫さんは、松下幸之助さんの「まず思う」というメッセージを、正面から素直に受け止め、具体的な方法は、自ら考えて実践を積み重ねたのです。
 
素直に受け止めることの大切さ、実践については自ら考えることの大切さを、稲盛和夫さんのこのエピソードが教えてくれると思います。


2024年08月09日

松下幸之助「素直に生きる」

松下幸之助さんは、多くの著作を遺されました。
その中で、最も良く読まれているのが『道をひらく』(PHP研究所)だと思います。『道を開く』に収録された一つ一つの文章は、見開き2頁の短い分量で書かれており、簡単に読み進めることができます。
 
『道をひらく』には、松下幸之助さんの経営人生を凝縮したと思われる、力強く、胸を打つ言葉があふれています。そのうち、私が好きな文章としては、「素直に生きる」「手さぐりの人生」「断を下す」「善かれと思って」「自問自答」「根気よく」「思い悩む」「心配またよし」「時を待つ心」「忍耐の徳」「ものの道理」「一陽来復」「芋を洗う」「体験の上に」などがありますが、いくら上げてもキリがありません。
 
「素直に生きる」には、このように書かれています。
「逆境は尊い。しかしまた順境も尊い。要は逆境であれ、順境であれ、その与えられた境涯に素直に生きることである。」「素直さを失ったとき、逆境は卑屈を生み、順境はうぬぼれを生む。」「逆境に素直に生き抜いてきた人、順境に素直に伸びてきた人、その道程は異なっても、同じ強さと正しさと聡明さを持つ。」
 
松下幸之助さんは、松下電器(現パナソニック)という世界的大企業を作り上げましたが、その経営者としての人生は、決して順風満帆のときばかりではありませんでした。倒産の危機に陥ったことも、一度や二度ではありません。長い経営者人生の中で体験した、順風のとき、逆境のときを振返りながら、その思いを、この文章に込めたのだと思います。
 
現在(2024年8月)は、会社経営にとって逆境のときといってよいかもしれません。
会社経営者として、この逆境のときを素直に生き抜くことが大切なときだと思います。
 




 西川 和志 
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士


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