2025年01月10日
明けましておめでとうございます。
この一年が皆様にとって幸多い年となりますよう祈念いたします。
さて、皆様「日に新た」という言葉をご存知でしょうか。
古代中国の殷王朝の創始者である湯王(とうおう)が、座右の銘としていた言葉とされています。
原文は「まことに日に新たなり、日に日に新たにして、また日に新たなり」というものです。
言葉の連なり自体が、躍動感をもって迫ってくるように感じます。
松下幸之助や土光敏夫、渋沢栄一といった経営者も、この言葉を好んで良く用いていました。
昨日よりも今日はより良くなろう。明日はさらに成長しよう。より良く会社を発展させていこう。
日々新たな気持ちで、新たな日を迎えたい。
このような、すがすがしい気持ち、がんばろうという気持ちにさせてくれる言葉です。
これから始まる1年を「日に新た」の心構えで過ごしていきたいと思います。
2024年12月10日
一般的に「日本の中小企業の数は、毎年減少している」と思われているのではないかと思います。
この点、総務省の【経済センサス調査】によると、日本の「中小企業」の全体の数は
2012年(平成24年) 約385万社
2014年(平成26年) 約380万社
2016年(平成28年) 約357万社
2021年(令和3年) 約336万社
となっています。
これを見ると、確かに、年々、中小企業が減少しているように見えます。
ただ、「中小企業」の中から個人事業者を除いた、「中小企業のうちの会社数」の数は
2012年(平成24年) 約167万社
2014年(平成26年) 約171万社
2016年(平成28年) 約159万社
2021年(令和3年) 約174万社
となっています。
これを見ると、会社形態の中小企業の数は、約10年間で、約7万社と若干増加していることが分かります。
さらに、国税庁の【会社標本調査】によると、資本金1億円以下の「中小法人」の数は
2012年(平成24年) 約251万社
2014年(平成26年) 約259万社
2016年(平成28年) 約264万社
2021年(令和3年) 約284万社
となっています。
こちらの調査によると、「中小法人」は、約10年間で、約33万社増加しています。
国税庁の調査結果を見ると、会社数はむしろ大幅な増加傾向にあるとさえ言ってよいように思えます。
また、総務省の調査の「中小企業のうちの会社数」と国税庁の調査の「中小法人」では、
約100万社の違いがあります。
なぜ調査ごとでこのように大きな開きがあるかについてですが、2つの調査の定義の違いに理由があります。
【経済センサス調査】では、「中小企業」について、一定の場所を占めて、従業者と設備を有し、
継続的に事業活動を行っている企業と定義しています。
簡単に言うと、昭和の時代からあるような「普通の会社」をイメージしてもらうと良いと思います。
一方、国税庁の【会社標本調査】では、シンプルに、「法人税の申告書を提出した法人」全てをカウントしています。
2つの調査からは、典型的な普通の会社とは異なる、多様なかたちの起業が行われていることが窺われます。
事業形態や事業内容も多様化するなかで、【経済センサス調査】の定義では、「中小企業」を狭く捉えすぎているのかもしれません。
2024年11月11日
今後の日本社会の最大の課題は、「労働力不足」です。
まず、2015年には、団塊の世代が定年退職を迎えました。
次に、2000年代から顕著になってきた少子化の進展。これにより若年労働人口が大きく減少しています。
一方で、日本人の人口が大きく減る段階には至っておらず、
社会全体での労働に対する需要(商品・サービスに対する需要)は減っていません。
これらの要因により、現在、あらゆる職種において、人手不足・労働力不足が顕在化しています。
ヒト・モノ・カネと一口にいいますが、今後は、「カネ・モノ」があったとしても、
「ヒト」がいないために、仕事ができないという事態が生じてきます。
しかも、今後少子化が解消される目処も立っていないため、
労働力不足については、時間が経てば自然に解決するというものではありません。
むしろ、少子化がますます進んでいることからすると、
今後、年数を重ねるごとに労働力不足は深刻になっていきます。
今後の企業経営においては、この「労働力不足」にどのように対応するかが極めて大きな課題となります。
2024年10月10日
今月は、ドラッカーの話をしたいと思います。
”ピーター・F・ドラッカー”、経営学の巨人です。
ドラッカーは膨大な著作を遺していますが、主著を上げるなら『マネジメント』でしょう。
『マネジメント』の冒頭に出てくる言葉で、簡潔で含蓄のある力強い言葉です。
具体的にいえば、新規顧客の獲得、獲得した顧客の定着、潜在需要の掘り起こし、新市場の開拓などを
指すものと思いますが、それだけに留まらない、より深い意味の広がりを感じさせる言葉です。
私が初めてドラッカーを読んだのは、今から10年ほど前になりますが
そのとき覚えた感動は今も覚えています。
ドラッカーの尽きない魅力について、今後もお伝えしていきたいと思います。
2024年09月10日
今月は、稲盛和夫さんのお話をしたいと思います。
稲盛和夫さんのエピソードの中で、私が特に好きなものです。
稲盛和夫さんは、30代後半の頃、松下幸之助さんの講演を聴きに行きました。
松下幸之助さんは、70代前半頃だったと思われます。松下電器は、確固たる立場を築き上げ、松下さんも「経営の神様」との評判を確立していました。
若き日の稲盛和夫さんは、これからの経営に役立つ何かを得ようと考え、この講演に臨んだものと思います。
その日の講演のテーマは、「ダム経営」でした。
「ダム経営」とは、ダムが日照りのときに備えて水を溜めておくように、企業も不景気などに備えて日頃から資金に余裕を持った経営をすべきであるとの松下幸之助さんの考えです。
講演が終わると、質疑応答の時間となり、聴講者の一人が質問しました。
「『ダム経営』のお話、大変興味深かったです。ただ、具体的にどうやればいいのか分からなかったので、教えてもらえないでしょうか?」
これに対し、松下幸之助さんは、こう答えました。
「そんな方法は私も知りませんのや。しかし、まず、やろうと思わなければなりませんな」
この答えに対し、会場には失笑が広がったといいます。一件立派なことを話していても、質問されたら具体的なことは何も言えないのかと、多くの聴衆は思ったのかもしれません。
しかし、このような聴衆の反応とは違い、稲盛さんは、松下さんの返答に強い感銘を受けたのです。
「そうか。まずやろうと思うことか」
そして、稲盛さんは、ダム経営をやろうと強く心に思い、以後の経営において、ダム経営を実践するための工夫を重ね、その結果、稲盛さんは、京セラを日本有数の大企業に育て上げました。
稲盛和夫さんは、松下幸之助さんの「まず思う」というメッセージを、正面から素直に受け止め、具体的な方法は、自ら考えて実践を積み重ねたのです。
素直に受け止めることの大切さ、実践については自ら考えることの大切さを、稲盛和夫さんのこのエピソードが教えてくれると思います。
西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員
昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士