2026年05月28日

村上春樹『風の歌を聴け』にマーケティングを学ぶ

久しぶりに、村上春樹氏のデビュー作『風の歌を聴け』を再読しました。
私は10代半ばから20代半ば頃にかけて、村上春樹氏の小説を5~6作ほど読みました。

しかし、作中のライフスタイル描写や主人公の語り口などに、今ひとつ馴染めないものを感じ、
いつしか手に取らなくなっていました。
 
先日、ふと書店の棚を眺めていたところ、『風の歌を聴け』が目に入り、久しぶりに読み直してみることにしました。
すると、自分でも驚いたことに、非常に楽しく読むことができました。
村上春樹氏から受ける印象も10代の頃とはまったく異なるものとなっていました。
 
今回、私が受けた印象を一言で表すならば、『風の歌を聴け』は、
極めて強いマーケティング意識に基づいて書かれた小説だ、というものです。

例えば、10代の頃には「気取っていて鼻につく」と感じていた文体も、今読み返してみると、
決して村上春樹氏自身にとっての自然なものではなく、既存の純文学との差異を生み出すため、
極めて意識的に作り込まれたものだと感じました。

また、以前は馴染めなかった、おしゃれなバーや音楽、酒、食事などのライフスタイル描写についても、
従来の重苦しい日本的私小説と異なる空気感を打ち出すため、演出的に配置されているものだと感じました。

誤解をおそれずに言えば、若き日の村上春樹氏は、
「このような文体で、このような世界観を描けば、賞の選考者や読者に強い印象を与えることができる。」
「この一作で、必ず世に出る。」という明確な狙いをもって、この作品を書いたのではないかと思います。

そして私は、そのような戦略意識に基づきながら、なお細部まで徹底的に磨き上げ、
高い完成度を持つ小説として成立させた村上春樹氏の小説家としての力量に、強い感嘆を覚えました。
 
このような観点から、村上春樹氏の他の作品についても、改めて読み直してみたいと思っています。 




 西川 和志 
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士


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