2026年08月31日
井原忠政さんという歴史小説家をご存知でしょうか。
代表作は、「三河雑兵心得」シリーズ。
徳川家に仕える架空の足軽・植田茂兵衛の出世物語です。
今、私が最も人にお薦めしたい小説です。
この小説の第1巻は1562年、主人公の植田茂兵衛が17歳のときから始まります。
この作品の何が面白いのか。
まず、架空の人物を主人公にしているため、物語を自由に展開できること、
そして何より、足軽の目から見た徳川家康の姿と戦国時代の描写が新鮮であることです。
徳川家康その人の人生は、今では誰もが知っています。歴史好きならなおさらでしょう。
家康を描いた小説も、山岡荘八や司馬遼太郎らの有名作家の作品を始めとして、
数え切れないほどあります。大河ドラマでも、家康は何度も主人公になっています。
要するに、家康という人物は、どう描かれてもある程度の既視感を覚えざるを得ないのです。
それが、一人の足軽の目を通して描かれると、まるで違って見えてきます。
大名や上級武将の視点・目線ではなく、我々と同じように、日々の暮らしがあり、
悩みもある一人の人間の視点から描かれる戦国時代。
そこいは、英雄としての戦国大名が描かれる歴史物語とは違った世界があります。
まるで自分自身が茂兵衛と共に、その時代・その場所で生きているかのような感覚を味わわせてくれるのです。
足軽の視点から見た総大将・徳川家康の姿も、他の小説や物語とはひと味違います。
総大将としての頼もしさもあれば、主人公に対する情を見せることもある。
一方で、部下の立場からして、少々仕えにくいところのある上司としての一面も描かれます。
「もし自分が家康の部下だったら、この人をどう見るだろうか」と思わせる、
生身の人間としての家康がそこにいます。
そして、シリーズを通じて、茂兵衛が少しずつ出世を重ねていく「出世物語」としての面白さも、
作品に大きな躍動感を与えています。
井原氏は、この『三河雑兵心得』のほかにも、『北近江合戦心得』『真田武士心得』というシリーズを書いています。
この3つのシリーズを合わせて、「戦国三部作」と呼ばれています。
そして、この「戦国三部作」は、今月、第15回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」を受賞しました。
ぜひ井原忠政氏の描く極上の戦国エンターテインメントを堪能していただきたいと思います。
これまでとは、一風変わった戦国時代の読書体験を味わえると思います。

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員
昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士