2025年11月25日

塩野七生『ギリシア人の物語』雑感

小説家の塩野七生さんといえば『ローマ人の物語』(新潮文庫)が代表作ですが、『ギリシア人の物語』(新潮文庫)という作品も書かれています。
この『ギリシア人の物語』では、(1)ポリス連合による「ペルシア戦争」の勝利による古代ギリシア世界の最盛期の到来、(2)二大強国であるアテネとスパルタによる「ペロポネソス戦争」の結果としてのアテネの凋落と、勝利したはずのスパルタの速やかな衰退、(3)マケドニアのアレクサンドロスの東方遠征による大帝国の形成とその瓦解、などが描かれています。
 
特に印象的だったのが、ペルシア戦争後に、偉大なる指導者であるペリクレスの下で、民主政を有効に機能させ、全盛期を迎えたはずのアテネが、そのペリクレスの死後、わずかな期間で、スパルタに完膚なきまでに敗北してしまい、しかもその後二度と国家として立ち直れなかったという、余りに落差の大きな凋落振りでした。
 
ペロポネソス戦争の敗因として最も大きなものは、スパルタとの戦争中であるにもかかわらず、スパルタとは何の関係もないイタリア南部のシチリア島へ無謀ともいうべき大遠征を行い、その上、戦略・戦術双方の拙さから大敗北を喫し、兵力・戦力の大部分を失ってしまったことでした。
後世の人間の目からは、なんと余計なことをしたものかと思います。
ペロポネソス戦争開戦当時、経済力も含めた総合的な国力において、アテネは、スパルタを大きく上回っていたのであり、スパルタが誇る最強戦士団との正面決戦を避け、防御と持久戦に徹してさえいれば、特別なことをせずとも、アテネは最終的に勝利していたものと思われます。
 
そうであるのに、シチリア遠征のような悪手を打って自滅してしまったのはなぜだったのでしょうか。私は、ペリクレスというリーダーが余りに優秀で有能すぎたために、後の時代のリーダーとなるべき人材が育っていなかった上、アテネ市民もペリクレスに依存しすぎていたため自分たちで冷静に物事を考える能力や姿勢を失っていたことに大きな原因があるのではないかと思います。
 
古代アテネの繁栄と没落は、国家あるいは組織において、重要な判断は感情に流されず冷静かつ長期的見通しのもとになされるべきであることを教えてくれるものと思います。




 西川 和志 
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士

西川 和志
税理士法人 森田経営
代表社員

昭和54年7月19日生
主な資格:税理士、弁護士


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